経営事項審査における総合評定値
経営事項審査において求められる総合評定値Pは、総合評点とも呼ばれ、建築一式なら建築一式、土木なら土木と申請業種ごとに算出されます。
その算出方法は、経営規模の評価項目であるⅩ₁、X₂、Z、Wの各項目と、経営状況の評価項目であるYに一定の係数をかけて算出します。
具体的には、次の算式によります。
総合評定値P=X₁×0.25+X₂×0.15+Y×0.2+Z×0.25+W×0.15
X₁、X₂、Y、Z、Wの詳しい内容は、それぞれ以下のとおりです。
X₁(工事種類別年間平均完成工事高)
経営規模を表す指標の1つで完成工事高の2年平均か3年平均のいずれか有利な方を選択することができます。
但し、申請業種ごとに取り方を変えることができないので、ある1つの申請業種で2年平均をとれば、他のすべての申請業種で2年平均を取ることになります。
また年間平均元請完成工事高Z₂の計算においても、完成工事高Ⅹ₁で選択した同じ平均を取るため、ここでの選択が他の項目に影響を与えます。
2年平均
- 審査対象事業年度とその前年度の完成工事高
3年平均
- 審査対象事業年度とその前年度と前々年度完成工事高
また、土木工作物の建設に関する工事であれば土木一式へ、建築物の建設に関する工事であれば、建築一式へというように審査を受ける業種に関連する他の業種で、審査を受けない業種の完成工事高を審査を受ける業種の完成工事高に積み上げて、完成工事高Ⅹ₁を上げることができます。(いわゆる積上計算)
専門工事間においても関連性がある物についても認められるケースがあります。
X₂(自己資本額および平均利益額)
経営規模を表す指標の一つで、次の算式により算出します。
X₂=(X₂₁+X₂₂)/2
X₂₁(自己資本額または平均資本額)
次のいずれか有利な法を選択します。
- 審査基準日の決算の自己資本額
- 審査基準日の決算の自己資本額と前年度の基準決算の自己資本額の平均
ただし自己資本額が0円に満たない場合は、0円とみなして計算します。
Ⅹ₂₂(平均利益額)
次の合計額の平均
- 審査対象事業年度とその前年度の営業利益
- 審査対象事業年度とその前年度の減価償却費
自己資本額Ⅹ₂₁は、額が大きいほど有利になるので前年度のの審査基準日の自己資本額の数字の方が大きければ、2年平均を選択した方が有利になります。
しかし先ほどの完成工事高Ⅹ₁での完成工事高の選択が問題になってきます。
すなわち、選択方法として次の4つの方法が考えられます。
- 自己資本額X₂₁として当期の審査基準日の数字を選択し、完成工事高Ⅹ₁として2年平均を選択する。
- 自己資本額X₂₁として当期の審査基準日の数字を選択し、完成工事高Ⅹ₁として3年平均を選択する。
- 自己資本高X₂₁として2年平均の数字を選択し、完成工事高Ⅹ₁として2年平均を選択する。
- 自己資本高X₂₁として2年平均の数字を選択し、完成工事高Ⅹ₁として3年平均を選択する。
評点アップのためには、これら4つのパターンについて事前にシュミレーションし、自社にとって最も有利な方法を選択することが大事になってきます。
Y(経営状況分析)
登録経営状況分析期間により算出された数値を使用します。
経営状況分析には、8つの分析項目があります。
そしてこの8つの分析項目が、経営状況分析Yに与える影響度合いには差があります。中でも純支払利息比率と負債回転期間、総資本売上総利益率の3つで経営状況分析Yに与える影響度合いは60%を超えています。
これは、借入金を減らし支払利息を減らすこと、そして売上総利益(粗利)を増やすことが、効果的に経営状況分析Yの評点アップにつながることを示しています。
例えば、借入金の返済をすると、実質的に支払利息は減ります。そうすると純支払利息比率の評価が上がりますし、売上高経常利益率の評価が上がる可能性もあります。また借入金が減ることにより負債回転期間の評価は上がります。
その借入金の返済の為の原資が、たとえば遊休土地や有価証券、過大な棚卸資産の売却だった場合、その資金を持って借入金の返済に充てると、土地や有価証券、棚卸資産などの固定資産が減少した分、総資本売上総利益率や自己資本対固定資産比率、自己資本比率の評価が上がります。
またその借入金が代表者個人からの借入金だった場合、経理上はその借入金を資本金に振り替えることもできます。そうすると借入金は減少し、資本金に振り替えたことで自己資本が増え、自己資本対固定資産比率・自己資本比率の評価が上がります。
Z(技術力)
業種別の技術職員の数を点数化したものと、種類別の年間平均元請完成工事高を点数化したものにより計算します。
Z=Z₁×0.8+Z₂×0.2
Z₁(技術職員数)
以下の区分により算出した点数を元に計算します。
ただし1人の職員が技術職員として申請できる業種は2業種まで
- 監理技術者資格証保有かつ監理技術者講習受講 1人につき6点
- 1級技術者で上記以外の者 1人につき5点
- 基幹技能者 1人につき3点
- 2級技能者 1人につき2点
- その他 1人につき1点
このように技術職員が上位資格を取得すれば、評点はアップします。
Z₂(年間平均元請完成工事高)
年間平均完成工事高Ⅹ₁で選択した2年平均または3年平均を用いて計算します。
2年平均
- 審査対象事業年度とその前年度の元請完成工事高
3年平均
- 審査対象事業年度とその前年度と前々事業年度の元請完成工事高
w(社会性等)
労働福祉の状況、建設業の営業継続の状況、防災協定締結の有無、法令遵守の状況、経理状況、研究開発の状況、建設機械の保有状況、ISO取得の状況など8項目について審査され、各項目の合計点をもとに評点化されます。
W=(W₁+W₂+W₃+W₄+W₅+W₆+W₇+W₈)×10×190÷200
W₁(労働福祉の状況)
雇用保険、健康保険および厚生年金保険について加入している場合は加点も減点もされず、未加入の場合は大きく減点されます。そのため経営事項審査の受審を考えた場合、加入が絶対条件となります。
W₂=W₂₁(営業年数)+W₂₂(民事再生法等の適用の有無)
営業年数W₂₁とは、建設業許可を受けてからの年数で計算されます。その評価の上限は35年、下限は5年です。
民事再生法等の適用の有無W₂₂は、民事再生期間中の会社に対して一律60点の減点を行います。
W₃(防災協定締結)
申請者である建設業者が、地方自治体等と災害時の防災協定を締結している場合や、その建設業者が加入する団体が防災協定を締結している場合は、15点加点評価されます。
W₄(法令遵守の状況)
法令遵守の状況W₄とは、審査期間中に国土交通省や都道府県から営業停止処分を受けたことがある場合は30点の減点、指示処分を受けたことがある場合は15点の減点評価がされます。
W₅(建設業の経理状況)=W₅₁(監査の受審状況)+W₅₂(公認会計士等の数)
監査の受審状況W₅₁とは、以下の場合においてそれぞれの点数が加算されます。
- 会計監査人を設置していた場合は20点
- 会計参与を設置していた場合は10点
- 社内の経理事務責任者が一定の確認項目にもとづき自主監査を行っていた場合は2点
公認会計士等の数W₅₂とは、
- 公認会計士等には1点、
- 2級登録経理試験合格者には0.4点が与えられ、以下の算式を用いて計算します。
1点×公認会計士等の数+0.4点×2級登録経理試験合格者の数
W₆(研究開発の状況)
研究開発の状況W₆の加点対象は、会計監査人設置会社に限定されています。研究開発費の額を評価し、その額により1~25点が加点されます。
W₇(建設機械の保有状況)
建設機械の保有状況W₇において、その評価の対象となる建設機械は、ショベル系掘削機、ブルドーザー、トラクターショベルに限られています。
建設機械1台の保有で1点が加算されますが、上限は15点です。たとえ20台保有していたとしても15点の加算に留まります。
W₈(ISO認証の取得状況)
加点対象となるISO認証は、ISO9001(品質マネジメントシステム)およびISO14001(環境マネジメントシステム)です。また加点されるには、ISOの認証範囲等に条件があり、その条件を満たした場合、取得したISOにより次のように加点されます。
- ISO9001およびISO14001の登録 10点
- ISO9001の登録 5点
- ISO14001の登録 5点
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