下請契約締結のルール
本来、下請契約は元請下請各々が対等な立場で両者の合意のもとで締結される必要があります。
また、契約内容に不明確な点があると、建設工事施工の際に様々なトラブルを引き起こすことにもなります。
建設工事の下請契約については、一般的な下請法ではなく、建設業法の規定が適用されています。
そこで下請契約締結事項には、建設業法や建設業法令遵守ガイドラインで様々な規定が定められています。
1 見積依頼は、工事内容、工期等の契約内容を具体的に提示し、下請負人が見積りを行うに充分な期間を設けなければなりません
請負人が適正な見積書を作成するためには、発注人から具体的な契約内容の提示を受け、請負人に充分な検討時間を与えることが必要です。
契約内容の提示で請負人の工事施工責任範囲や施工条件を明確にしておけば、将来発注者との間のトラブルを防ぐこともできます。
建設業法では、見積依頼の具体的内容の提示項目として、次の13項目が定められています。
- 工事内容
- 工事着手の時期及び完成工事の時期
- 請負代金の全部または一部の前払い規定があるときは、その支払の時期及び方法
- 工事の設計変更等があった場合における請負代金又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
- 天災等の不可抗力による損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
- 価格等の変動に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
- 工事の施工により第三者に損害が発生した場合における賠償金の負担に関する定め
- 注文者の資材提供又は建設機械の貸与があるときに、その内容及び方法に関する定め
- 注文者が工事の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引き渡し時期
- 請負代金の支払時期及び方法
- 瑕疵担保責任に関して講ずべき保証保険契約の締結
- 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息や違約金
- 契約に関する紛争の解決方法
また見積期間は、次のように定められています。
- 下請工事の予定価格が500万円に満たない工事については中1日以上
- 下請工事の予定価格が500万円以上5,000万円に満たない工事については中10日以上
- 下請工事の予定価格が5,000万円以上の工事については中15日以上
上の2及び3の工事については、やむを得ない事情があるときは、見積期間をそれぞれ5日以内に限り短縮することができます。
2 見積書は工事の種別ごとに経費の内訳が明らかになったものでなければなりません
○○工事一式、○○○円といった見積書を作成していませんか。これだと発注者に安易に値引きのきっかけを与えてしまいます。
見積書には経費の内訳を記載して算定根拠を明らかにしてください。
そうすることで、発注者の合理的根拠のない安易な金額交渉を防ぐこともできます。
3 下請契約の締結・変更に当たっては、その内容を明示した契約書を作成し、元請下請の双方が相互に交付しなければなりません
これは、元請下請間のトラブルを未然に防ぐことを目的としています。口約束では言った言わないの世界になってしまいます。
契約書には建設業法で定める、次の事項を記載することが必要です。
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事着手の時期及び工事完成の時期
- 請負代金の全部または一部の前払い規定があるときは、その支払の時期及び方法
- 工事の設計変更等があった場合における請負代金又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
- 天災等の不可抗力による損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
- 価格等の変動に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
- 工事の施工により第三者に損害が発生した場合における賠償金の負担に関する定め
- 注文者の資材提供又は建設機械の貸与があるときに、その内容及び方法に関する定め
- 注文者が工事の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引き渡し時期
- 請負代金の支払時期及び方法
- 瑕疵担保責任に関して講ずべき保証保険契約の締結
- 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息や違約金
- 契約に関する紛争の解決方法
また注文書・請書による請負契約締結の場合は、次のいずれかの方法によることが必要です。
- 基本契約書を締結した上で、個別の取引については注文書及び請書の交換
- 注文書及び請書のそれぞれに、同内容の基本契約約款の添付
4 追加工事等が発生した場合には、着工前に書面による変更契約を締結しなければなりません
追加工事が発生した場合、又は工期に変更が生じた場合等には、着工前に書面による変更契約を締結しなければならないとされています。
こうした場合に十分な協議も行われないまま工事に着手すると、後々元請下請間のトラブルにならないとも限りません。
そのため契約変更手続きが行われた後に工事の着手にかかることを要求しています。
もし元請けが、合理的な理由もなく下請工事の契約変更を行わない場合は、建設業法違反に問われます。
5 自己の取引上の地位を不当に利用し、通常必要な原価にも満たない金額で請負契約を締結することはできません
本来、請負代金の決定に当たっては、元請下請間で工事施工範囲や施工条件を反映した合理的なものであるべきです。
ところが下請の元請けに対する取引依存度が大きく、経営上も大きなウエィトを占めている場合、元請けが下請けに対して不利益な要請を行っても受け入れざるを得ない場合もあります。
通常必要となる原価にも満たない請負金額、無理な工期や手段での工事は、手抜き工事の原因となり、下請業者の経営基盤を脅かすことになりかねません。
そこで建設業法では、建設工事の注文者が取引上の地位を利用して、請負人に不当に低い請負代金を強いることを禁止しています。
6 下請契約締結後、自己の取引上の地位を不当に利用し、使用資材等の指定して、下請人の利益を害することはできません
契約締結後に注文者が自己の取引上の有利な地位を利用して、下請人に対して資材等の指定が行われると、当初の見積り金額に相違が出たり、購入済みの資材が無駄になったりと下請人の利益を不当に害します。
そこで下請人保護のため、この規定が設けられています。
ただしここで問題となるのは、あくまで下請契約締結後の使用資材等の指定の場合だけです。
7 元請人が費用負担することなく、下請人に工事のやり直しを求めることができる場合は限られています
元請人が費用負担することなく、下請人に工事のやり直しを求めることができるのは、次の場合に限られています。
- 下請人の施工が契約書に明示された内容と異なる場合
- 下請人の施工に瑕疵等がある場合
ただし上記に該当する場合であったとしても、その経緯が以下の内容であれば、やり直し工事に必要な費用は元請人が負担することになります。
- 下請人が施工内容等を明確にするように求めたにもかかわらず、元請人が正当な理由なく施工内容等を明確にせず、下請人にそのまま継続して作業を行わせ、結果、契約内容と異なる工事となった場合
- 施工内容について下請人が確認を求め、元請人が了承した内容に基づき下請人が施工したにもかかわらず、下請工事の内容が契約内容と異なることとなった場合
すなわち、下請人の責めに帰すべき理由がある場合を除いては、やり直し工事に必要な費用は元請人が負担する必要があるとしているのです。
8 元請人と下請人は、契約締結に当たって適正な工期を設定し、元請人はできる限り工期に変更が生じないように努めなければなりません
元請人の施工管理が十分に行われなかったため工期が変更になったなど、下請人の責めに帰すべき理由がない工期の変更に起因する下請工事の費用の増加については、元請人がその費用を負担することになります。
その際も、変更の内容を書面に記載し、変更契約書として相互に交付しなければなりません。
建設業許可取得 | 会社設立 | 更新手続 | 決算変更届 | 料 金 | 事務所紹介
-----------------------------------------------------------------------------------------------
山口秀樹行政書士事務所 お気軽にお問い合わせください
〒540-0012 ☎06-6355-4755
大阪市中央区谷町1丁目7番3号 受付時間 9:30~21:00
天満橋千代田ビル1号館2階C号室 (日曜・祝祭日を除く)
●取扱業務
建設業許可申請、建設業許可更新、決算変更届、経営事項審査、会社設立、記帳代行